ベンダールーム
とある有名企業から広報誌への原稿依頼が来た。今まで知らなかったが、その企業はお台場にあった。雨の中、見上げるようにそそり建つ本社ビルに入っていく。テレビ局以外ではこんな大きな会社に入るのは初めてのこと。いつもながら気後れしてしまう。正面から入るとちょっとしたホテルのような広大なロビー。すぐ左手には打ち合わせ用のラウンジ、正面受付カウンターには4,5人の受付嬢が出迎えてくれる。その回りには、上階から降りてくる社員を待っている外部の人々。もちろん、自分もその中の1人なのだが、アポを取っていたためか、扱いがいいからなのか、名前を告げると「ご案内します」とすぐにエスコート嬢が近づいてきて、受付の奥へと導かれる。重厚なカーペット敷きの空間が現れ、10までの番号が記されたダークトーンの部屋が整然と並んでいる。その一番奥に通される。中も同じダークトーンの壁で、革張りのソファが4つ、壁には絵画が飾られ、部屋の隅には現在一押しの商品が置かれ、内線用の電話はバング&オルフセンといちいちオシャレ。組織というものに免疫がないので、にわかに緊張してくる。とりあえず背後に広がるお台場の景色が見ながら待つ。やがてノックの音がして「はい」と身だしなみを整え慌てて立ちあがると、案内してくれたさっきのお姉さんがお茶を運んできた。まもなくして、一流企業の広報部の方が2人来られ、緊張しながらもなんとか打ち合わせを終える。
その時聞いたが、会社内の自販機があるようなちょっとした休憩所の事を「ベンダールーム」というらしい。もちろん知らなかった。だって、会社員になったことないから。
でも、なぜかその企業にはベンダールームはないらしい。そして社食も。
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